症例報告(2/3UP)

2023-06-17 23:52:00

肩関節腱板損傷~なかなか治らない、根気のいる治療~

先日来院された患者さんですが、1年前に右肩が急に痛くなり、四十肩だと思い医療機関にはかからず良くなるのを待っていたそうです。その間、趣味の野球を肩が痛いながら続けていましたが、2カ月ほど前に強くボールを投げた際に、右肩の痛みが強くなってしまい、腕の上りが悪くなってしまい、心配になり来院されました。

まずは徒手検査で、有痛弧は陰性でしたが、挙上時痛が強く、屈曲で110°、外転で95°、後挙(伸展+内旋)では母指がL5までしか挙がりませんでした。他、スピードテスト、ドロップアーム、リフトオフの各テストは陰性でしたが、インピンジメントサインで陽性。

また、棘下筋筋腹部と大結節外側部に圧痛、外旋内旋ともにROM制限が見られました。

有痛弧での陰性が引っ掛かりますが、もちろんエコーでも確認。

すると・・・棘上筋は綺麗な状態でしたが、棘下筋腱部での損傷が認められました。

 

エコー画像 (4).png

 

 

おそらく、いわゆる四十肩で肩の変性が起こっていたところに、投球により腱板に強い負荷がかかり損傷を起こしてしまったようです。

エコーにて棘下筋の連続性はみられるため、完全断裂はしていないようなので、このまま保存的治療で様子を見ていくことに。

もちろん、肩関節を使わないことに越したことはないですが、それではROMの低下を招くし、そもそも肩を使わない場合、QOLが著しく低下してしまいます。

当院では、運動療法+ラジオ波で関節の柔軟性確保と治癒促進を、痛みに関してはハイボルトをあてて、治療を行うことにしております。

そうすることで、治療期間が長引くことが多く根気と忍耐力が必要と言われる肩関節損傷に、少しでも楽な状態で、後遺症も残さず、長い治療期間を乗り切ってほしいと考えております。

2023-05-07 05:33:00

腓骨裂離(剥離)骨折 〜捻挫と間違われやすい骨折〜

今回は、足首の捻挫と間違われやすい足関節骨折症例を紹介します。

足首を捻った場合、最も多いのは前距腓靭帯損傷、いわゆる捻挫ですが、とくに小児の足関節捻挫には前距腓靭帯損傷の中に腓骨の裂離骨折が潜んでいることがあります。

 

しかもこの裂離骨折はレントゲンでは判りにくく、病院でも捻挫と診断されることが多いと考えられます。

 

通常、足関節損傷のレントゲンは3方向〜4方向撮ることが多いと思われます。即ち、正面像、側面像、右斜位像、左斜位像ですが、私が勤めていた整形外科のドクターは、小児の足関節損傷の場合、前述の4方向に加え、足関節底屈位像も撮っていました。そうすることで、見逃されやすい腓骨の裂離骨折もフォローしていたのです。

 

当院は接骨院のためレントゲンは撮れませんが、エコーでの撮像によってその見逃されやすい腓骨の裂離骨折が判別できることがあります。

 

小見出しを追加.png 

腓骨下端部が靭帯に引っ張られ剥がれるように骨折している。以前は剥離骨折とも言われていた。

 

その点では、足関節損傷においては靭帯損傷もわかるだけでなく骨折も判別できるので、エコー画像がとても使いやすい判別方法だと思います。

 

裂離骨折がわかった場合、「捻挫」ではなく「骨折」となりますのでそれに準じた治療が必要です。即ちギプス固定となります。

 

骨折が見逃され捻挫として治療を受けた場合、固定方法や固定期間等が不足し、裂離骨片が癒合せず離れたまま治癒となります。その後は捻挫癖が残りやすく、大人になった頃にひどい捻挫をして病院でレントゲン撮影をしてみて昔骨折をしていたことに気付く、というパターンです。

 

当院では、まずエコー画像にて骨折を疑った場合、近くの整形外科を紹介し、ドクターの指示を仰ぎます。ドクターが処置や後療法を当院に依頼、指示された場合、ウォーキングキャスト等のギプス固定やLIPUSを行い、適切に施療を行なっていきます。

 

処置や判断によっては、患者さんに負担を強いる難しい場面もありますが、将来も見て「患者さんの不利益にならない事」、を第一選択として患者さんと向き合いながら施療を進めていくことにしています。

 

2023-04-15 15:21:00

足底腱膜炎(筋膜炎)~足の裏が痛む!難治性になる前に~

先日、当院に踵が痛むという患者さんが来院されました。
50代男性の方で仕事はトラックドライバー。荷積みや荷下ろしも行うそうです。もともとは腱板損傷で当院にて施術を受けていた方ですが、今日は踵が痛むとのこと。調べてみると、足の裏、踵と土踏まずの間あたりに圧痛があるようです。この時点で足底腱膜炎とほぼ判断できますが、念のためエコーにて確認。
足底腱膜炎.png
健側画像を取り忘れてしまい、健患比較ができず申し訳ありませんが、やはり、足底腱膜が肥厚し、fibrillar patternにも乱れがあるように見えます。
足底腱膜炎(筋膜炎とも)は、教科書的にはスポーツをしている学生さんに多いイメージですが、実際の臨床の実感では、50代~70代の男性にも多く見受けられるように思います。
学生さんの場合は、下腿部の筋も固く、オーバーユースとして捉えられますが、後者の場合は、年齢による変性も関係してくるのかもしれません。
当院では、まずは痛みを取るためハイボルトを当て鎮痛、つづいて下腿部の筋からアプローチし、足底腱膜にラジオ波を用いてしっかりと柔軟性を出して再発の予防を行います。
なかなか良くならず、難渋することの多い足底腱膜炎、根気よく治療を行うことが必要となります。
2023-03-19 18:02:00

腱鞘損傷(A2プーリー損傷)〜ボルダラー用語「パキった」〜

こんにちは、よねくら接骨院、米倉です。桜が咲いてきましたが、まだまだ朝晩冷えたりしてますね。

先日、パキった患者さんが来院されました。

 

ぱきる?

クライマー用語みたいなものですね。

患者さんは30代男性、私のクライミング仲間で、クライミングレベルが上級者に分類されるほどのガチなクライマーです(ちなみに私は中級程度)。

 

パキるとは損傷分類では3つに分類されることが出来ます。

1.前腕屈筋群断裂(特の多いのは環指屈筋時作用する筋肉)

2.虫様筋損傷(手内筋の一つで、主に第2指〜第4指MP関節の屈曲を行います)

3.腱鞘損傷(主に多いのは環指A2プーリー。各指の屈筋腱が屈曲時に浮き上がらないよう抑える役目を担っています。)

 

今回は、この中でも多いとされる3番目の腱鞘損傷に当たります。独特で負荷のかかりやすいクライミング特有の指の損傷で、中上級者に多い損傷です。

 

簡単に説明すると、指の腱を抑えている鞘(腱鞘)が断裂を起こしてしまい(主に多いのは薬指のA2)、腱の抑えが利かなくなってしまった状態で、損傷した瞬間、パキっと音を感じることから「パキる」と言われています。

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左側:写筋骨格系キネシオロジー原著第3版より転載

 

エコー画像でみるとよくわかります。上が怪我をした指で下が正常な指ですが、線で示した腱が骨(一番白く映ってるもの)から少し浮いているのが解ります。腱鞘が断裂し抑えが利かなくなっている状態ですね。このままでも何もしなければ痛くありませんが、抵抗を架けながら指を曲げていくと激痛が走ります。

腱鞘断裂損傷.jpg

 

こうなってしまうと普通は登ってはいけません。でも、ガチのクライマーの方は登ってしまいます。なので、せめてテーピングをして登るように、またスラブ課題など指に負担のかからない課題をするよう指示します(足置きも重要な練習です)。

テーピングはバディテーピングが基本ですが、損傷により副子固定してしまうこともあります。  

でも本当は安静にするのが一番です。

完全断裂した場合、手術適応も考えれられます。無理して登らないことが一番の治癒方法です(1~2か月が基本)。

 

ちなみに、当院ではエコー画像で判断後、ハイボルト、マイクロカレントで除痛、腫れを抑え、治癒促進を促します。

また、テーピングや状況によって副子固定を行い、筋拘縮予防や治癒後の再断裂を防ぐため、ラジオ波を利用した温熱療法と手技療法を行います。

 

さらに、パキる人に多いのが、ホールドの持ち方がアーケイやセミアーケイ(カチ持ち、クリンプ、ハーフクリンプとも)を多様する方に多いと考えられます。特に、セミアーケイは結構多用されている方はいらっしゃるのではないでしょうか?私もそうなんです(汗)。

アーケイのほうが保持力が高く癖になるといわゆる「カチラー」になりがちですが、その分、指の関節に掛かる負担は増大し、パキるだけでなく指節関節痛や誘発したり関節変形を進めてしまいます。普段はタンデュ(オープンハンド)を使い、浅指屈筋群を鍛えておき、ホールドが細かくて持てないここぞというときにカチ持ちをするようにしましょう。アーケイやセミアーケイは次の起こすムーブのの幅が狭くなったり、飛距離が出なかったりするので、そういう点でもタンデュ持ちの練習を!

 

3月とはいえ、まだまだ肌寒い日がたまにあると思います。今回のこういった怪我は、練習のし過ぎによる疲労の蓄積やウォーミングアップ不足や冷えによるものも原因とも言えます。

 

けがを未然に防ぐためにも、専門家の下でコンディショニングづくりを行ってください!

 

2023-03-19 17:50:00

大腿骨疲労骨折~エコーで早期発見、LIPUSで早期治療~

先日、当院に大腿骨疲労骨折の患者さんがいらっしゃいました。

患者は高校生で陸上部、種目は長距離。3月初めころより大腿部やお膝周りに痛みが出始め、コーチに相談したところ、疲労骨折かもしれないということでMRIがある整形外科を勧められ受診、レントゲンでは全くわからないものの、MRIでは骨膜の炎症所見と肥厚が見られました(当院でも確認済み)。

 

XP像.jpg

 

 

 

 

炎症反応.jpg



疲労骨折を起こしてしまった場合、発見の時期にもよりますが長期の競技離脱もあり得ます。レギュラーのポジションを失うことさえあります。

なるべく早い競技復帰のため、整形外科医師の同意を得て当院でLIPUS治療を開始しました。

LIPUSは骨折治癒を促進する治療法ですが、私自身利用したこともあり、骨折は早く治ることに越したことはないと考えており、接骨院を開院するにあたり、必要不可欠な治療器でした。

骨折治療に欠かせないのはLIPUSだけではありません。エコーによる骨折部位の同定も必要になってきます。皮下直下の骨折であれば圧痛等で(術者自身は)判別ができますが、大腿骨は周囲が大きな筋肉に囲まれ、圧痛だけでなく目視による判断も必要です(患者さんも安心します)。

 

大腿骨疲労骨折.jpg

 



そして、当院では、学生さんのスポーツ活動を支援する一環で、高校生以下はLIPUSやハイボルトは無料でご利用いただけるようにしています(大学生・短大生・専門生は半額)。

ちなみに、大腿骨疲労骨折は陸上長距離選手に多いとされ、特に中高生に多く感じます。当初はレントゲン像には映らず見逃されがちで、気づいた時には骨膜反応が進んでしまっており治療に難渋することもあります。今回、コーチの方の経験則による賢明な判断で早期発見、早期治療に繋がりました。現場にこういう方がいらっしゃると、選手たちも安心して練習に打ち込めます。また整形外科医師も初診でいきなりMRIを撮られた事に畏敬の念を覚えました。

当院では、LIPUSによる骨折治療と並行し、ラジオ波治療もお勧めしています。筋の拘縮予防やそもそもの硬さを取り除くことも行うと、治療効果だけでなく予防効果にもつながります

まだまだ朝晩は冷え込みます。スポーツをする際にはしっかりとしたウォーミングアップとコンディショニングづくりを心掛けてください!

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