症例報告(9/12UP)
腓骨裂離(剥離)骨折 〜捻挫と間違われやすい骨折〜
今回は、足首の捻挫と間違われやすい足関節骨折症例を紹介します。
足首を捻った場合、最も多いのは前距腓靭帯損傷、いわゆる捻挫ですが、とくに小児の足関節捻挫には前距腓靭帯損傷の中に腓骨の裂離骨折が潜んでいることがあります。
しかもこの裂離骨折はレントゲンでは判りにくく、病院でも捻挫と診断されることが多いと考えられます。
通常、足関節損傷のレントゲンは3方向〜4方向撮ることが多いと思われます。即ち、正面像、側面像、右斜位像、左斜位像ですが、私が勤めていた整形外科のドクターは、小児の足関節損傷の場合、前述の4方向に加え、足関節底屈位像も撮っていました。そうすることで、見逃されやすい腓骨の裂離骨折もフォローしていたのです。
当院は接骨院のためレントゲンは撮れませんが、エコーでの撮像によってその見逃されやすい腓骨の裂離骨折が判別できることがあります。
腓骨下端部が靭帯に引っ張られ剥がれるように骨折している。以前は剥離骨折とも言われていた。
その点では、足関節損傷においては靭帯損傷もわかるだけでなく骨折も判別できるので、エコー画像がとても使いやすい判別方法だと思います。
裂離骨折がわかった場合、「捻挫」ではなく「骨折」となりますのでそれに準じた治療が必要です。即ちギプス固定となります。
骨折が見逃され捻挫として治療を受けた場合、固定方法や固定期間等が不足し、裂離骨片が癒合せず離れたまま治癒となります。その後は捻挫癖が残りやすく、大人になった頃にひどい捻挫をして病院でレントゲン撮影をしてみて昔骨折をしていたことに気付く、というパターンです。
当院では、まずエコー画像にて骨折を疑った場合、近くの整形外科を紹介し、ドクターの指示を仰ぎます。ドクターが処置や後療法を当院に依頼、指示された場合、ウォーキングキャスト等のギプス固定やLIPUSを行い、適切に施療を行なっていきます。
処置や判断によっては、患者さんに負担を強いる難しい場面もありますが、将来も見て「患者さんの不利益にならない事」、を第一選択として患者さんと向き合いながら施療を進めていくことにしています。
足底腱膜炎(筋膜炎)~足の裏が痛む!難治性になる前に~
腱鞘損傷(A2プーリー損傷)〜ボルダラー用語「パキった」〜
腱鞘損傷(A2プーリー損傷)
クライミング中に「パキッ」と音が…腱鞘損傷の一例|指の腱を守る正しい対策とは
概要
30代のクライマー男性がクライミング中に指から「パキッ」という音とともに痛みを感じて来院。いわゆる“パキる”と呼ばれる腱鞘損傷でした。今回はその原因や施術内容、再発予防のポイントについて、クライマー目線で詳しくお伝えします。
クライマーに多い「パキる」症状の多くは、指の腱鞘(A2プーリー)損傷が原因です。特にアーケイ(クリンプ)持ちを多用する上級者に多く、正確な判断と早期の対応が回復を左右します。
他の類似損傷として
1.前腕屈筋群断裂(特の多いのは環指屈筋時作用する筋肉)
2.虫様筋損傷(手内筋の一つで、主に第2指〜第4指MP関節の屈曲を行います)
3.腱鞘損傷(主に多いのは環指A2プーリー。各指の屈筋腱が屈曲時に浮き上がらないよう抑える役目を担っています。)
等も考えられます。
筋骨格系キネシオロジー原著第3版より転載
腱鞘断裂のエコー画像での確認
指の腱を支える腱鞘(とくに薬指のA2)は、過負荷により断裂することがあります。
今回の患者さんはクライミング中に「パキッ」と音を感じ、その後強い痛みが出現。エコーで確認すると、腱が骨から浮いており、腱鞘の支えが失われていました。
正常な指と比較することで損傷が明瞭となり、確定的な判断につながりました。
損傷の瞬間に自覚されやすい「パキっ」という音と痛み
「パキる」は俗称ですが、明確な損傷のサインです。特にアーケイやセミアーケイ(ハーフクリンプ)といった高負荷な保持方法では、指にかかるテンションが極端に増加し、腱鞘損傷のリスクが高まります。
抵抗をかけて指を曲げると強い痛みが出るのが特徴です。
適切な施術と運動制限が重要
当院では、エコーでの確認後、ハイボルト療法やマイクロカレントで痛みと腫れの軽減を図ります。さらにラジオ波による温熱療法や手技によるケアで治癒促進を促します。
また、損傷度に応じてバディテーピングや副子固定を行い、再発予防と日常動作の負担軽減を図ります。
ただし、基本は安静が最優先で、完全断裂がある場合には手術の判断も必要となることがあります。
よくある誤解
「痛みがなければ登っていい」と考える方もいますが、腱鞘が切れていても安静時には痛まないことがあります。
登攀時に腱が浮き上がってしまい、さらなる損傷を招くリスクがあります。
とくに「テーピングしてるから大丈夫」と過信するのも危険です。
再発予防には「持ち方の見直し」も重要
アーケイ(クリンプ)やセミアーケイは保持力が高い反面、指への負担が大きくなります。普段から**オープンハンド(タンデュ)**を意識的に使い、指の浅屈筋群を鍛えておくことが予防につながります。
冷えや疲労もリスク因子
3月とはいえ、朝晩はまだ冷え込む日も多く、ウォーミングアップ不足や練習のし過ぎによる疲労の蓄積も損傷の引き金となります。
練習量の見直しやコンディショニングの徹底が未然予防につながります。
最後に
よねくら接骨院では、スポーツ現場で起こりやすいケガの評価と対応を行っています。
クライミング中に指に違和感を覚えた方、急な痛みが出た方は、自己判断せずにぜひ一度ご相談ください。
エコー検査を通じて、適切な判断と早期対応をサポートいたします。
大腿骨疲労骨折~【高校生陸上選手の大腿骨疲労骨折】早期発見とLIPUS施療でスムーズな復帰へ
大腿骨疲労骨折
長距離ランナーに多い大腿骨の疲労骨折。今回は、早期の対応と当院でのLIPUS施療により、競技復帰を目指す高校生アスリートの症例をご紹介します。
◆ 概要
高校生陸上部の長距離選手が、大腿部や膝周辺の痛みを訴え来院。MRI検査で大腿骨疲労骨折と判断され、整形外科との連携のもと当院にてLIPUS施療を実施。骨折部位へのアプローチと周囲筋のコンディショニングも同時に行い、早期復帰を目指しています。
◆ 疲労骨折とは
繰り返しの運動負荷で骨に小さなひびが入る状態です。
◆ 今回のケース
高校陸上部で長距離を走る学生さん。3月頃から大腿部〜膝周りの痛みが続き、MRIで大腿骨の疲労骨折と判断されました。早期対応により、長期離脱を避けられる見込みです。
◆ 施術内容と取り組み
1. エコーとMRIによる的確な判断
疲労骨折は、発症初期ではレントゲンに写らないことが多く、見逃されやすいのが特徴です。今回は整形外科でMRI検査が行われ、骨膜の炎症と肥厚を確認。当院でもエコーにより部位を再確認しました。大腿骨のように筋肉に囲まれた部位では、圧痛や視診だけでの判断が難しいため、画像での補助が非常に重要です。
整形外科ご厚意によるXPとMRI像
当院によるエコー検査
2. LIPUSによる骨折部の施療
LIPUS(低出力パルス超音波)は、骨折の回復を促す非侵襲的な施術法として知られています。今回も医師の同意を得た上で導入しました。LIPUSは特に疲労骨折のような微細な骨損傷に有効とされ、競技への早期復帰を支援します。
### 参考文献(LIPUS関連)
1. 伊藤超短波株式会社 オステオトロンV(LIPUS機器)紹介ページ
2. アルケア株式会社「〈オステオトロンV〉を適正にご使用いただくために」(使用方法ガイド)
3. 『臨床整形外科』48巻10号(2013年10月)-LIPUSの基礎・臨床応用特集
4. 厚生労働省「医療技術評価提案書」-橈骨遠位端骨折におけるLIPUSの有効性
3. ラジオ波による筋肉コンディショニング
大腿骨周囲は大きな筋群に囲まれており、筋の拘縮があると回復が遅れることがあります。当院ではLIPUSに加え、深部加温が可能なラジオ波を用いて、筋肉の硬さを緩和し、患部周囲の状態を整える施術を併用しています。
◆ よねくら接骨院の取り組み
当院ではスポーツに励む学生を応援しています。高校生以下の方には、LIPUSおよびハイボルト電気施術を無料でご提供しています(大学・専門学生は半額)。骨折や捻挫、成長期の痛みなども、状態に応じた適切なケアを行っております。
◆ よくある誤解
「レントゲンで異常がない=問題なし」と思われがちですが、疲労骨折の初期は画像に映らないことも多く、痛みを無視して運動を続けると悪化する恐れがあります。少しでも違和感がある場合は、早めの受診が重要です。
◆ おわり
今回のように、現場のコーチや保護者の早期対応が選手の未来を守ることに繋がります。当院では、競技を続ける皆さまが安心して通える環境を整えております。朝晩の冷え込みが続く季節、ウォーミングアップやクールダウンを丁寧に行い、ケガの予防を意識してスポーツに取り組みましょう。