症例報告(9/12UP)
腓骨裂離(剥離)骨折 〜捻挫と間違われやすい骨折〜
足首の捻挫と間違われやすい骨折|腓骨遠位端の裂離(剥離)骨折
一般的な「足首の捻挫」と思われやすい中に、腓骨の裂離骨折が潜んでいることがあります。
とくに小児では見逃されやすく、早期の見極めと適切な固定が大切です。
なぜ「捻挫」に紛れやすいのか
足首をひねった際、最も多いのは前距腓靭帯損傷ですが、
小児では腓骨の裂離骨折(靭帯に牽引されて骨片がはがれるタイプ)が混在していることがあります。
痛みや腫れの位置が似ているため、初期には捻挫相当と判断されやすいのが特徴です。
レントゲンで見逃されやすい理由
骨片が非常に小さく、通常の撮影方向では判別が難しい場合があります。
小児の足関節損傷では、底屈位像など追加撮影で確認することで見逃しを防ぐことができます。
当院でのエコー観察の有用性
当院ではレントゲン撮影は行えませんが、超音波エコー観察により、
靭帯の付着部不整や骨皮質の乱れを確認し、骨折が疑われる所見を早期に把握できます。
必要に応じて医療機関と連携し、精査や処置へつなげます。

所見の特徴
- 腓骨外果付近の限局した圧痛・荷重時痛
- 足首外側に腫脹と皮下出血
- エコーで靭帯付着部の不整像や骨片疑いを確認できることがある
初期の正しい対応が、後の「捻挫癖」や「足首の不安定性」の予防につながります。
当院での流れ
- エコーで骨折が疑われる所見を確認 → 整形外科をご紹介し、医師の評価・方針を依頼。
- 医師の指示に基づき、ギプス固定(ウォーキングキャスト等)やLIPUSによる後療を実施。
- 固定期間・荷重制限・復帰時期などを共有しながら経過をフォロー。
🧒 小児例・保護者の方へのご案内
小児の足関節裂離骨折は、初期に見逃されると成長後の足関節不安定の原因となることがあります。
ご家庭でも、以下の点にご注意ください。
- 受傷後1〜2日は無理に歩かせず、安静を優先してください。
- 入浴は医師または施術者の指示に従い、固定を濡らさないようにしましょう。
- 学校の体育・部活動は、再評価後の許可が出るまで控えるようにしてください。
- 痛みがなくなっても、急なジャンプや走行動作の再開は避けるのが安心です。
- 医師や施術者からの「荷重OK」指示までは、松葉杖や支えを利用して安全を確保します。
成長期は骨端線(成長軟骨)が存在するため、軽い外力でも骨折に至ることがあります。
「ただの捻挫」と思っても、違和感が続く場合は早めの相談が大切です。
まとめ
足首の捻挫と骨折は見た目が似ていますが、経過には大きな差が出ます。
当院では、エコー観察と医療機関連携を通して、早期発見と確実な対応を行っています。
成長期のケガは、将来の動きやすさを左右します。保護者の方も一緒にサポートしていきましょう。
※本記事は柔道整復師による施術・応急対応の紹介を目的としており、診断・治癒を保証するものではありません。
状態により医療機関での精密検査が必要な場合があります。
足底腱膜炎(筋膜炎)
足底腱膜炎(かかとの痛み)|症例紹介
歩くたびに踵が痛む――今回は、トラックドライバーの方に多い「足底腱膜炎(足底筋膜炎)」の症例を紹介します。
エコー観察で確認し、ハイボルト・ラジオ波を中心とした施術を行いました。
概要
50代男性・トラックドライバーの方。荷積みや荷下ろしなど立ち作業が多く、
以前は肩のケアで通院されていましたが、この日は踵の痛みを主訴に来院されました。
圧痛は踵と土踏まずの間(足底中央部)に限局しており、足底腱膜炎の可能性が高い状態でした。
エコーでの観察
念のためエコーで確認したところ、足底腱膜の肥厚と線維構造(fibrillar pattern)の乱れが見られました。
健側の画像は取り忘れてしまいましたが、典型的な変化が観察されました。

足底腱膜炎とは
足底腱膜(足底筋膜)は、かかとから足指の付け根までをつなぐ強い結合組織で、
歩行や立位の際にアーチ構造を支える重要な部位です。
この部位に繰り返しの牽引ストレスや加齢による変性が加わると、微小な損傷と炎症が生じやすくなります。
発症傾向と背景
一般的にはスポーツを行う学生層に多い疾患とされていますが、
実際の臨床では50〜70代の男性にも頻繁にみられます。
学生の場合はオーバーユースが中心ですが、中高年では筋の柔軟性低下や血流減少、足底の変性なども関与すると考えられます。
当院での対応
1. ハイボルト刺激による疼痛緩和
初期にはハイボルト刺激で痛みと炎症反応を鎮め、歩行時の負担を軽減します。
2. 下腿筋群へのアプローチ
ふくらはぎ(下腿後面)の筋緊張が強いと、腱膜への牽引が増大します。
下腿部の筋膜リリースやストレッチ的手技で柔軟性を回復させます。
3. ラジオ波温熱による足底の柔軟化
ラジオ波温熱を用いて足底腱膜に深部加温を行い、組織の柔軟性と血流循環を促進します。
再発を防ぐためには、「痛みを取る」だけでなく「動きやすい足」に戻すことが重要です。
経過と考察
足底腱膜炎は、発症からの期間や生活習慣によって改善速度が異なります。
痛みの軽減→筋柔軟性の回復→再発予防という段階的アプローチが有効です。
難治化しやすい症例もあるため、根気よく継続することが大切です。
まとめ
立ち仕事・歩行動作が多い方に多い足底腱膜炎。
早期の対応と下腿からのケアが回復への近道です。
踵や足裏の痛みを感じたら、我慢せず早めのご相談をおすすめします。
※本記事は柔道整復師による施術紹介を目的としており、診断・治癒を保証するものではありません。
状態によっては医療機関での精密検査や加療が必要となる場合があります。
腱鞘損傷(A2プーリー損傷)〜ボルダラー用語「パキった」〜
腱鞘損傷(A2プーリー損傷)|クライマー症例
クライミング中に「パキッ」と音――いわゆる“パキる”で知られる腱鞘(A2プーリー)損傷の一例を、
原因・対応・再発予防までクライマー目線でまとめました。
概要
30代男性クライマー。登攀中に指で「パキッ」という音と痛みを自覚して来院。
A2プーリー(薬指に多い)周囲の損傷が疑われ、エコー観察と状態評価を実施。
痛み・腫れの軽減を図りながら、固定・運動制限・温熱ケア等を組み合わせて経過を追いました。
「パキる」とは?—クライマーに多いA2プーリー損傷
指の腱鞘(プーリー)は、屈筋腱が浮き上がらないよう骨に押さえつける役割を担います。
アーケイ(クリンプ)やセミアーケイの多用でテンションが高まり、A2プーリーに過負荷が集中しやすくなります。
鑑別で考えたい周辺の損傷
- 前腕屈筋群の損傷(特に環指屈筋に関与する筋群)
- 虫様筋損傷(第2〜第4指のMP屈曲に関与)
- 腱鞘損傷(環指A2に多い:屈筋腱の浮き上がり抑制が低下)

エコーでの観察—「腱が骨から浮く」所見
今回は登攀中の明確な音と直後の痛みが手がかりに。
エコー観察では、患側で屈筋腱が骨からやや浮く像が確認され、腱鞘の支え低下が示唆されました。
正常側との比較が、損傷の明瞭化に有用です。
特徴的な自覚所見
- 損傷瞬間の「パキッ」という音+鋭い痛み
- 抵抗をかけて曲げると強い痛みが出やすい
- 保持で痛みが増す/特定方向の負荷で不安感
当院の対応(症状・目標に応じて個別化)
1. 観察と初期対応
エコーでの部位確認と圧痛・腫脹の評価、負荷テストを参考に方針を決定。
基本は安静・負荷制限を最優先し、登攀は段階的に再開します。
2. 痛み・腫れの軽減サポート
ハイボルト刺激・マイクロカレントを中心に、痛みや腫れの軽減を目指します。
状態に応じてラジオ波温熱や手技で周辺軟部組織のコンディショニングも実施。
3. 固定と日常の保護
バディテーピング・副子固定で患部の保護と再発予防を図ります。
生活動作での負担軽減を優先し、登攀復帰は段階的ロード管理で。
※完全断裂が疑われる場合や変形・力が入らない等の症状では、医療機関での精密な確認・加療が必要となることがあります。
※当院は応急・保存的ケアの範囲で対応し、必要に応じて連携をご案内します。
よくある誤解
- 「痛くなければ登ってよい」:安静時に痛みがなくても、保持で腱が浮き上がり悪化することがあります。
- 「テーピングしていれば安心」:過信は禁物。固定は補助であり、負荷管理が最優先です。
再発予防のポイント
- 持ち方の見直し:アーケイ/セミアーケイ一辺倒を避け、オープンハンド(タンデュ)を意識的に活用。
- 筋力バランス:浅屈筋群の補強、前腕の持久的コンディショニング。
- ウォームアップ・クールダウン:冷えや疲労の蓄積はリスク。季節・時間帯に応じて調整。
- 練習量管理:課題グレード・ボリューム・連登のコントロールを。
まとめ
クライミング中の「パキッ」は、腱鞘損傷のサインであることが少なくありません。
早めの相談と適切な負荷管理で、無理なく復帰を目指しましょう。
指に違和感が出た際は、自己判断での登攀継続を避け、ご相談ください。エコー観察を活用し、早期対応をサポートします。
※本ページは柔道整復師が提供可能な範囲での施術・ケアの紹介です。
記載の内容は効果を保証するものではなく、状態により医療機関での精密検査・処置が必要となる場合があります。
大腿骨疲労骨折
大腿骨疲労骨折|症例紹介
長距離ランナーに多い大腿骨の疲労骨折。
今回は、早期対応とLIPUS施術によって競技復帰を目指す高校生アスリートのケースをご紹介します。
概要
高校生の陸上部長距離選手が、大腿部〜膝周辺の痛みを訴えて来院。
整形外科でのMRI所見により疲労骨折が確認され、医師との連携のもとLIPUS施術を実施。
骨部への刺激に加え、周囲筋群のコンディショニングを並行して行い、競技復帰を支援しました。
疲労骨折とは
繰り返しの運動や負荷によって、骨の一部に微細なひびが入った状態を指します。
主に長距離ランナーや跳躍競技など、同部位への反復ストレスが原因となります。
今回のケース
陸上部で日常的に長距離を走る高校生。
3月頃から続く大腿部の痛みを放置していたところ、MRIで疲労骨折が判明しました。
早期の対応により、長期離脱を避けられる見込みとなりました。
施術内容と取り組み
1. エコーとMRIによる部位確認
疲労骨折は初期ではレントゲンに写らないことも多く、画像による補助的な観察が重要です。
整形外科でMRI検査を行い、骨膜の炎症と肥厚を確認。当院でもエコーで再確認しました。
筋肉に囲まれた大腿骨周辺は圧痛だけでは判断が難しく、画像観察が有効です。


2. LIPUSによる骨部への刺激
LIPUS(低出力パルス超音波)は、骨組織の修復過程をサポートする非侵襲的な施術法です。
医師の同意を得て導入し、疲労骨折のような微細損傷に適した刺激を加えることで、自然な回復力を支援します。
参考文献
- 伊藤超短波株式会社「オステオトロンV」紹介ページ
- アルケア株式会社「〈オステオトロンV〉適正使用ガイド」
- 『臨床整形外科』第48巻10号(2013年)LIPUS特集号
- 厚生労働省 医療技術評価提案書「橈骨遠位端骨折におけるLIPUSの有効性」
3. ラジオ波による筋コンディショニング
大腿骨周囲は大きな筋群に囲まれており、拘縮や血流低下が回復を妨げる場合があります。
当院ではLIPUSに加え、ラジオ波温熱を併用し、深部を穏やかに温めて筋の柔軟性を高め、バランスを整えます。
よねくら接骨院の取り組み
スポーツに励む学生を応援しています。
高校生以下の方はLIPUSおよびハイボルトを無料対応(医師の同意が必要な場合あり)。
骨折・捻挫・成長期の痛みなど、各年代・競技に応じた施術を行っています。
よくある誤解
「レントゲンで異常がない=問題なし」と思われがちですが、疲労骨折初期は画像に映らないことも多いです。
違和感や鈍い痛みが続く場合は、早めの相談と安静の判断が重要です。
おわりに
コーチや保護者の早期対応が、選手の未来を守ります。
当院では、学生アスリートが安心して練習を続けられるようサポート体制を整えています。
季節の変わり目は冷えによる筋緊張も起こりやすく、ウォームアップ・クールダウンの徹底がケガ予防につながります。
※本記事は柔道整復師による施術紹介を目的とした内容であり、診断や治癒を保証するものではありません。
状況により医療機関での精密検査・加療が必要となる場合があります。
