症例報告(11/19UP)
シーバー病~スポーツKIDSに多発!~踵骨骨端症にはLIPUSが効く~
シーバー病とは?
シーバー病は、踵骨の骨端症です。子供の踵は成長軟骨や骨端核が存在しており、大人の踵ほど強くはありません。スポーツ活動で硬くなったふくらはぎやアキレス腱、足底腱(筋)膜が骨端核を強く引っ張ることで、骨端核が分離したり成長軟骨が傷ついてしまい発症します。
一般的には16歳ごろになると成長軟骨が閉鎖し大人の骨になると言われています。中高生以上での発症はほとんどなく、10歳前後のスポーツ活動に盛んな子供、特に足をよく使うスポーツ、サッカーやバスケットボール、ダンス、長距離走などの競技をされているお子さんによく見られます。
歩行も困難なほどの痛みがでることもあり、長期に渡ることもありますが、成長とともに自然に治癒し予後も良好です。希に踵部の血行不良となり骨壊死を引き起こすこともあります。
検査方法
当院では、エコー画像検査器を用いて、骨端核や成長軟骨の状態を可視化し、程度の判別を行います。
エコー検査が優れているところは、被ばく等の危険がなく、大掛かりな装置が必要ないため手軽に受けられ、尚且つ患者さんや親御さんに画像を見ながら説明ができる点です。
一般的な病院での治療方法
①スポーツ活動を中止し安静を図る
②抗炎症を目的とした投薬、湿布
③痛みが強い場合は松葉杖を使い免荷を行う
④足底挿板(インソール)を用いて足底や足関節の負担を軽減する
⑤ストレッチ指導
当院での治療方法
①スポーツ活動を1/2程度に控える。
→完全に中止するのが一番なのですが、そもそもシーバー病になる子供は簡単に中止ができないポジションの子供だったりします。当院では、スポーツ活動の頻度を落としてもらいますが可能な限り続けていける方向で治療を進めていきます。
②痛みが強い場合はハイボルトを用いて消炎鎮痛を行う。
→投薬に比べ身体への負荷が少なく、特に薬の副作用に左右されやすい子供には物理療法の方が最適だと思われます。また、子供だけでなくスポーツ全般的に、アンチドーピングの観点からも、ハイボルト等を使用した物理療法は推奨されております。
③LIPUSを用いて治癒促進を図る。
→骨折の治癒を40%促進させる効果や、軟骨の再生を促す効果も認められており、スポーツ整形外科ではシーバー病治療にも用いられています。副作用や痛みのような刺激もなくもなく非侵襲的な治療法で、10~20分寝ているだけで治療が終わります。
④硬くなった筋や腱をラジオ波を使って弛緩させる。
→ラジオ波による温熱治療にて、速やかに硬くなった腓腹筋や足底筋群を緩めます。ラジオ波の特性により両足で10分程の施術で十分な弛緩が得られます。スポーツ活動を継続しながら治療する場合は必須の治療法となります。
⑤自宅でのストレッチ指導とスポーツ前のテーピング指導を行い、踵部の負担の軽減を図る
→自宅でセルフで容易にできる継続性の高いストレッチは、筋腱の柔軟性の維持とともに怪我に対する意識の向上にも繋がります。また、練習の際にはテーピングを用いることで足関節を安定させ、足底やアキレス腱の負担の軽減を図ります。
治療期間
治癒促進効果のあるLIPUSを使ったとしてもそこまで劇的に治療期間が短縮されるわけではありませんが、それでも何もしないよりは効果を見込めます。子供のスポーツ環境や状態などによりますが、数か月ほどの治療で良くなることが多い様です。
治療例
症例#3
11歳 男性 運動歴:サッカー/週3~4日
今回の患者さんもサッカーの練習後に踵が痛みはじめ整形外科を受診、シーバー病の診断を受けましたが、そこでは特に治療は行われず、スポーツ活動の中止を指導されました。
特に治療がされない事に不安を抱かれた親御さんが同じサッカークラブの方に相談され、当院を紹介して頂き来院となりました。来院時、両踵が痛むとの事でエコーで確認しましたが、右側の骨端核に顕著に特有所見が見られたものの左側ではエコー上は確認できませんでした。しかし、圧痛もしっかりとあり、また疼痛の訴えもありますので、おそらく左側も発症しているものと考えられます。
余談ではありますが、昔、整形外科で働いていた際、指示していた整形外科恩師から言われたことがあります。
「レントゲン等の画像所見と、実際に診た視診・触診所見が食い違った場合は、後者を優先して処置を行いなさい」
レントゲンやエコー画像も完全に描写されないことがあるという事で、やはり判断するのに一番必要なのは、臨床経験だという事です。
話がそれましたが、今回も左側はエコー画像上は問題がないように見えますが、患者さんの訴えや触診などにより、両側シーバー病と判断してよさそうです。
シーバー病は、基本的にはスポーツ活動を中止し、安静にしていれば良くなります。
それでも、少しでも早く治してスポーツ活動を再開したい気持ちをお持ちの患者さんや親御さんには、安静+αの治療が必要となります。
今回もLIPUS治療の通院指導と、週1回のラジオ波治療を行い様子を見ることにしました。痛みはそこまで強くなかった為ハイボルトは初検時とのみ行い、それ以降は行っておりません。
2024/04
3週間後、疼痛が治まってきたため、エコーにて右側の踵を確認いたしました。
分離していた骨端核が元の一つの形に戻りつつあることがエコー画像にて確認できました。ゴールデンウィークを挟んでいたため、通院数も当初の想定より少なかったのですが、しっかりとLIPUSが効いているようです。
まだ圧痛が残っているため、引き続き加療を行っていますが、体育等の参加はできるなら参加しても良いと思われます。
2024/05
症例#2
11歳 男性 運動歴:サッカー/週3~4日
こちらの患者さんも既にスポーツ整形外科にてシーバー病の診断を受けており、治療も受けていましたが、LIPUS治療のみ近所である当院をご希望され、医師の承諾を得て通院となりました。
LIPUS治療は毎日20分の照射が適切となってくるため、病院が遠方である場合、通院が難しくなります。小学生だと一人で行かせる範囲も狭まるため、近隣でLIPUS治療を行える接骨院も視野に入れても良いかもしれません。
運動療法などはスポーツ整形で行っているため、当院では主にLIPUS治療と痛みがある場合はハイボルト治療を行っていきます。腓腹筋や足底腱膜の固さによってはラジオ波を使う予定ですが、本人も早期治療を目指すためスポーツ活動を自粛しているようで、今のところ問題はないようです。
現在、週4ほどで通院しており、もちろん、ハイボルトやLIPUSの利用料は無料、施術料のみ負担(200円)して施療にあたっております。
2024/04
症例#1
10歳 男性 運動歴:バスケットボール/週3~4日
既に整形外科にてシーバー病の診断を受けて治療中でしたが、痛みが強く、整形外科ではハイボルテージ療法がなかったため、ハイボルテージによる鎮痛目的で当院に来院されました。
整形にてシーバー病の診断を受けていましたが、念のため当院でもエコーにて確認いたしました。
整形外科にて適切な治療を継続的に受けられているため、また通院も難しいとの事で、当院ではLIPUSは行わず、消炎鎮痛効果のあるハイボルテージ治療のみとなりました。
整形外科での治療が優先される為、当院では保険施療ではなく自費扱いとなり、初診料1500円と施術料1300円(10分程)がかかり、ハイボルテージ料金は小学生の為無料での施術となりました。
施療後、通院時の痛みが消え、楽に帰られていきました。ハイボルテージでの鎮痛効果は飽くまでも一時的ですが、継続的に行うことで効果が長続きすることがあります。
2023/08
踵骨骨端症(シーバー病)~小学校低学年に多い、踵の痛み~
今回は踵骨骨端症(シーバー病)についてです。
スポーツ活動が盛んな子供がかかってしまう病気です。小学校2年生~4年生あたりの子が多いと感じています。
今回の患者さんもやはりバスケ(ミニバス)を一生懸命頑張っている子でした。
以前から左の踵が痛く整形外科にてシーバー病の診断を受けており、リハビリを行っていたら今度は右踵が強く痛むようになってしまい、とにかく痛みを止める方法はないかと、当院を受診されました。
整形外科に診断とリハビリを受けられているのですが、念のため当院でもエコーにて確認。
痛みが強くなった右踵は、踵骨の骨端核が分離し少し剝がれてきているようにも見えます。
あまり良い状態ではないようです。左踵もシーバー病の状態を呈しています。
~施術~
患者さん(&親御さん)のご希望として、とりあえず痛みを取ってほしいとの事でした。
急な痛みを取り除くには、ハイボルトが一番です。さらに、当院では下腿の筋とアキレス腱の緊張を取り除くためにラジオ波も使用します。
また、骨端症といった骨の障害にはLIPUSを使い、治癒の促進、治療期間の短縮を目指します。
今回の患者さんはリハビリは整形外科で行いたいとの事で、当院では痛みの除去を念頭においての施療となりました。
この場合、整形外科リハビリテーションとの同時の施療は、接骨院では完全自費となってしまうことを説明しなくてはなりません。
(整形外科にて診断を、リハビリは接骨院でのみ希望の場合は、接骨院でも保険適用となる場合がございます)
また、LIPUSは中長期的に続けて利用することで初めて効果があり、単発利用は効果が薄いということで今回は利用しませんでした。
~施療時間~
施療自体の時間は20分程。初診の方でしたので問診や検査等もあり全体で50分程度でした。
~費用~
初診料と自費(ハイボルトは小中学生は無料、ラジオ波半額の500円、ほか自費施術料)で4000円ほどでした。
保険適用となった場合、医療助成があり1000円以内となることが多いです。
~まとめ~
踵骨骨端症治療において、まず医療サイドから言われることは、「スポーツを中止する」だと思います。私も、整形外科で働いている時、そのように患者さんに伝えておりました。
しかし、実際はどうでしょうか? 医療サイドが止めても、スポーツを続けていくお子さんが多いのが現実です。であれば、痛みを一時的にでも取り除き、その原因筋をほぐして少しでも痛みを抑えながらもスポーツ活動を続けてもらい、痛みの度合いによってスポーツ活動の制限をコントロールしていくような、患者サイドと医療サイドの歩み寄りが必要だと私個人は思っております。
もちろん、限度はあります。レッドラインを超えるような痛みや症状が出た場合は、すぐに中止してもらう判断と勇気をお互いに理解してもらうことが前提です。
以上のことから、当院では、お子さんのスポーツ活動や状況に応じて、提案を行いながら施療を行っています。