症例報告(11/19UP)
小趾基節骨骨折(足の小指の骨折)
意外に簡単折れる?!
足の指の骨折
小趾基節骨骨折
今回の患者さんは、もともと当院に四十肩治療で通院されている患者さんでした。
その日、足を引きずって来院されたのでどうされたのか聞いてみると
「2日前に荷物の入った段ボール箱に足をぶつけてしまった」
とのこと。
足の引きずり方や受傷理由が気になったので、見てみることにしました。
年齢は40代男性、既往としてDMあり。
右小趾基節骨部に強い圧痛と皮下出血班を認めました。また外転や屈曲をした際の運動時痛も著明、もちろん荷重時痛もあり。
私の経験上、この状態はほぼ折れていると思われます。
もちろん、このまま骨折と判断し整形外科受診を勧めることもできますが、エコーにて確認したほうが患者さんも、納得いたします 。
エコーで確認後、やはり基節骨で骨の不正像が見つかりました。さらに若干の転移も見られましたので、応急的に牽引整復を行い、テーピングによる固定を行い、患者さんに紹介状とともに整形受診を指示しました。
足趾骨折の固定には、バディーテーピングが好ましく感じます。
転移が強かったりした場合はシーネ固定も考えますが、シーネ固定は関節拘縮のリスクがありまた荷重した時点で転移が起きてしまうため、松葉杖による免荷の方が効果が高く、そちらも考慮します。
足趾の骨折は第2趾~第5趾では基節骨が多く、母指では末節骨が折れることが多いと言われています。
整形外科は紹介後、当日受診され骨折の診断を受けられ、休みの都合上、整形受診後4日後に当院へ来院。
整形医師からの報告書及び後療の同意を口頭で得ており、患者さんが早期治癒を希望されたため、LIPUS治療を開始しました。
LIPUS(低出力超音波パルス療法)
骨折部位に微弱な超音波を断続的に照射する治療法(低出力超音波パルス療法)で 骨癒合が促進されます。 骨癒合期間が約40%短縮されたとする臨床研究の報告もあります。
月曜日から毎日通院されて一週間、当初は運動時痛と圧痛、荷重時痛を訴えられていましたが、金曜日ごろから圧痛、運動時痛が軽減し始め、一週間後の月曜日にはほぼ消失いたしました。
固定を除去し、私生活でも通常通りの生活を送るよう勧めましたが、屈曲伸展動作で若干の制限が見られたため、ROM訓練を行い機能回復を図っていきます。
LIPUSを約2週後、受傷後22日目、圧痛も完全消失となり、LIPUSは終了となり、ROM制限もほとんど見られなくなったため、経過観察に切り替え、年明け後のエコーにて治癒を予定しております。
通常、「足趾の骨折は3週間固定の4週治癒」と言われるが・・・
今回、受傷から治癒予定までLIPUSを使って3~4週でした。
通常、足趾の骨折は保存療法がほとんどで、3週間固定を行い、4週目に治癒、とされることが多いのですが、何をもって治癒とするか、という見解があり、この「4週治癒」とは骨癒合上の治癒とされると思います。
実際は、骨癒合4週で得られても、関節可動域訓練が必要だったりと日常生活では不便さが残り、患者さんの視点では「治癒」とは言い難い状況だったりします。また3週間も固定すればその分関節拘縮のリスクも高まり、場合によっては後遺症にまでなってしまうこともあります。
私が足趾の骨折にLIPUS治療を強く勧めるのは、足趾の骨折は固定が難しく、かと言って完全免荷(松葉杖歩行)だとADLが急激に低下してしまうため、なるべく早く骨癒合を得たいからです。関節拘縮のリスクも回避され、日常生活への復帰も飛躍的に早まります。
「足指の骨折は、放っておいても治る」けど、早く治しましょう。
当院で使用するLIPUSは厚労省認可の機器
伊藤超短波 オステオトロンV
となります。毎日20分の照射が好ましく毎日通院する必要がありますが、リスク等はなく、照射による刺激等もありません。
距骨裂離骨折~突然の怪我、応急手当で予後が変わる~
店舗前の歩道で転倒され、そのまま担がれるように当院へ来院されました患者さんです。
腓骨裂離(剥離)骨折 〜捻挫と間違われやすい骨折〜
今回は、足首の捻挫と間違われやすい足関節骨折症例を紹介します。
足首を捻った場合、最も多いのは前距腓靭帯損傷、いわゆる捻挫ですが、とくに小児の足関節捻挫には前距腓靭帯損傷の中に腓骨の裂離骨折が潜んでいることがあります。
しかもこの裂離骨折はレントゲンでは判りにくく、病院でも捻挫と診断されることが多いと考えられます。
通常、足関節損傷のレントゲンは3方向〜4方向撮ることが多いと思われます。即ち、正面像、側面像、右斜位像、左斜位像ですが、私が勤めていた整形外科のドクターは、小児の足関節損傷の場合、前述の4方向に加え、足関節底屈位像も撮っていました。そうすることで、見逃されやすい腓骨の裂離骨折もフォローしていたのです。
当院は接骨院のためレントゲンは撮れませんが、エコーでの撮像によってその見逃されやすい腓骨の裂離骨折が判別できることがあります。
腓骨下端部が靭帯に引っ張られ剥がれるように骨折している。以前は剥離骨折とも言われていた。
その点では、足関節損傷においては靭帯損傷もわかるだけでなく骨折も判別できるので、エコー画像がとても使いやすい判別方法だと思います。
裂離骨折がわかった場合、「捻挫」ではなく「骨折」となりますのでそれに準じた治療が必要です。即ちギプス固定となります。
骨折が見逃され捻挫として治療を受けた場合、固定方法や固定期間等が不足し、裂離骨片が癒合せず離れたまま治癒となります。その後は捻挫癖が残りやすく、大人になった頃にひどい捻挫をして病院でレントゲン撮影をしてみて昔骨折をしていたことに気付く、というパターンです。
当院では、まずエコー画像にて骨折を疑った場合、近くの整形外科を紹介し、ドクターの指示を仰ぎます。ドクターが処置や後療法を当院に依頼、指示された場合、ウォーキングキャスト等のギプス固定やLIPUSを行い、適切に施療を行なっていきます。
処置や判断によっては、患者さんに負担を強いる難しい場面もありますが、将来も見て「患者さんの不利益にならない事」、を第一選択として患者さんと向き合いながら施療を進めていくことにしています。