症例報告(9/12UP)

2023-05-07 05:33:00

腓骨裂離(剥離)骨折 〜捻挫と間違われやすい骨折〜

足首の捻挫と間違われやすい骨折|腓骨遠位端の裂離(剥離)骨折

一般的な「足首の捻挫」と思われやすい中に、腓骨の裂離骨折が潜んでいることがあります。
とくに小児では見逃されやすく、早期の見極めと適切な固定が大切です。

なぜ「捻挫」に紛れやすいのか

足首をひねった際、最も多いのは前距腓靭帯損傷ですが、
小児では腓骨の裂離骨折(靭帯に牽引されて骨片がはがれるタイプ)が混在していることがあります。
痛みや腫れの位置が似ているため、初期には捻挫相当と判断されやすいのが特徴です。

レントゲンで見逃されやすい理由

骨片が非常に小さく、通常の撮影方向では判別が難しい場合があります。
小児の足関節損傷では、底屈位像など追加撮影で確認することで見逃しを防ぐことができます。

当院でのエコー観察の有用性

当院ではレントゲン撮影は行えませんが、超音波エコー観察により、
靭帯の付着部不整や骨皮質の乱れを確認し、骨折が疑われる所見を早期に把握できます。
必要に応じて医療機関と連携し、精査や処置へつなげます。

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腓骨下端が靭帯牽引で剥がれるように外れるタイプ(通称:剥離骨折)

所見の特徴

  • 腓骨外果付近の限局した圧痛・荷重時痛
  • 足首外側に腫脹皮下出血
  • エコーで靭帯付着部の不整像や骨片疑いを確認できることがある
重要:裂離骨折が疑われる場合は、「捻挫」ではなく骨折相当の固定が必要です。
初期の正しい対応が、後の「捻挫癖」や「足首の不安定性」の予防につながります。

当院での流れ

  1. エコーで骨折が疑われる所見を確認 → 整形外科をご紹介し、医師の評価・方針を依頼。
  2. 医師の指示に基づき、ギプス固定(ウォーキングキャスト等)LIPUSによる後療を実施。
  3. 固定期間・荷重制限・復帰時期などを共有しながら経過をフォロー。

🧒 小児例・保護者の方へのご案内

小児の足関節裂離骨折は、初期に見逃されると成長後の足関節不安定の原因となることがあります。
ご家庭でも、以下の点にご注意ください。

  • 受傷後1〜2日は無理に歩かせず、安静を優先してください。
  • 入浴は医師または施術者の指示に従い、固定を濡らさないようにしましょう。
  • 学校の体育・部活動は、再評価後の許可が出るまで控えるようにしてください。
  • 痛みがなくなっても、急なジャンプや走行動作の再開は避けるのが安心です。
  • 医師や施術者からの「荷重OK」指示までは、松葉杖や支えを利用して安全を確保します。

成長期は骨端線(成長軟骨)が存在するため、軽い外力でも骨折に至ることがあります。
「ただの捻挫」と思っても、違和感が続く場合は早めの相談が大切です。

まとめ

足首の捻挫と骨折は見た目が似ていますが、経過には大きな差が出ます。
当院では、エコー観察と医療機関連携を通して、早期発見と確実な対応を行っています。
成長期のケガは、将来の動きやすさを左右します。保護者の方も一緒にサポートしていきましょう。

※本記事は柔道整復師による施術・応急対応の紹介を目的としており、診断・治癒を保証するものではありません。
状態により医療機関での精密検査が必要な場合があります。