症例報告(11/19UP)
膝裏のふくらみ~ベーカー嚢腫~
今回はベーカー嚢腫です。
女性、特に中年以降の方に多いのですが、膝の後ろに膨らみがあって気になる、ということはございませんか?
それはきっとベーカー嚢腫かもしれません。
ベーカー嚢腫とは、膝の裏にある滑液包とういわば「膝関節の緩衝材」が炎症を起こして膨らんでしまっている病態のことを指します。
膝関節の関節液の分泌量とも関係があるとみられ、変形性膝関節症や関節リウマチ、痛風、激しいトレーニングなどで、慢性的に関節液が過剰に分泌され、関節包から滑液包へと溢れだし、そこに貯留した状態、であると考えられています。
上述の様に、変形膝関節症の方に多く、そのためか、中年以降の女性の方に多くみられると考えられます。
(札幌スポーツクリニックさんHPより転用)
今回の患者さんは、当院にて加療する前は、医科にてヒアルロン酸の注射を受けておりました。膝の痛みが引いた後も定期的に1年以上、続けていたそうです。そのうち、ヒアルロン酸を打ち続けていても痛みが治まらず、当院への来院となり、2か月ほどの加療を行い回復。ヒアルロン酸注射も現在は行っていないようです。
今回、1カ月ぶりに来院され、膝の裏のふくらみが気になってきたとの申告があったのでエコーを撮ってみることに。
触診では、膝関節膝窩部内側から腓腹筋内側頭起始部あたりまで膨らみがありましたが、それに沿ってエコーを撮ってみると、境界明瞭な低エコー上像としてベーカー嚢腫が描写されました。
ベーカー嚢腫は良性腫瘍なので問題ないのですが、トラブルを抱えるであろうリウマチ性ベーカー嚢腫や、ほかの腫瘍性病変との鑑別もこのエコー状態で判別が可能です。
とりあえずは良性のベーカー嚢腫ですが、何らかの原因で破裂したり、また肥大しすぎると関節可動域制限を起こしてしまったり、周囲の血管を圧迫したりしてトラブルの原因となることがあります。
お膝の炎症を抑えていく加療を行うことで(=抗炎症薬という訳ではありません。保存的治療も含まれます)、徐々に消退することが多く、当院でもそれに準じた施療を行います。
別の方法として、注射による穿刺吸引や手術による摘出術も選択肢として挙げられますが、一番最後の方法として捉えたほうが良いようです。
★ベーカー嚢腫は当院のエコーでも判別が可能です。
エコー検査のみなら初診の方で1,600円、再診の方なら500円で検査可能で、お時間も10~20分程度で済みます。
もしお膝の裏側のふくらみが気になるようでしたら、一度ご来院ください。
膝の打撲~打撲をエコーで見てみると?~
今回は、膝の打撲です。
患者さんは、44歳男性、稲城市在住、趣味はボルダリングと登山、子供とキャンプ。
ボルダリング中にスタートでミスをしてしまい、膝をホールドに激しく打ち付けました。
えっと、私です。米倉が今回の患者さんです。
打撲により今回は筋の挫滅傷が見受けられました。強い打力が筋組織を圧迫し、筋挫傷を伴わせた状態です。
エコーにおいても、筋の損傷と出血が見受けられます。
受傷直後は少しの出血を伴っておりましたので、水道水で傷口を洗い流した後、軟膏を塗りこんだガーゼを患部に当て、テーピングで抑えて絆創膏としておしましです。
水道水でも十分な殺菌効果があると昔教わったことがあります。消毒液、沁みるじゃないですか・・・。
筋挫傷は1週間ほどで回復すると言われています。1週間後、またエコーで確認してみましょう。
みなさんも怪我には十分気を付けて、そして怪我した場合は速やかな処置を行ってください!
腱鞘炎(ばね指/弾発指)
今回の患者さんは、ばね指(腱鞘炎)です 。
★ばね指とは?
指には指の関節を曲げる屈筋腱と、その腱の跳ね上がりを抑えているトンネルのような腱鞘があります。このうち、腱鞘が何らかの原因で肥厚してくると次第に屈筋腱が締め付けられ動きが悪くなり、屈筋腱自体が肥大化し、腱鞘のトンネルを通りにくくなってきます。
そうすると、曲げ伸ばしの際に肥大化した腱が腱鞘にひっかかり、指に力を入れた際に引っ掛かりが外れ、ガックンとばねが弾けたような状態を呈すため、ばね指と言われています。
一般的には、オーバーユース(使い過ぎ)が原因と言われていますが、中でも出産前後、更年期の女性に多発するため、女性ホルモンとの関連性も疑われています。その他では、糖尿病の方にも起こることが多いと言われています。
★今回来院された患者さんは50代女性
特に既往はなく最近突然痛み始めたとの事。バネ様の症状はまだないもの、お仕事で指先をよく使うこともあり、その時に痛むし、朝起きたときも痛むようです。
触診して中指MP関節に圧痛と、硬結を認めました。
硬結=腱の肥大化とみて差し支えないようです。
エコーを撮って健側と患側を比べてみました。腱鞘炎はエコー撮影の代表的疾患とも言えるもので、よく確認できます。もちろん、腱などの軟部組織の疾患は、医科で行うレントゲンでは描写されません。
エコーで腱鞘炎を見る場合、腱の断面を撮影し、健患比較で腱の肥大化を見ます。今回も、はっきりと違いが出ました。
腱鞘炎で間違いないようです。
腱鞘炎治療は、当院ではラジオ波による温熱と、ハイボルトによる消炎鎮痛、前腕から手指への手技を行います。
超音波やレーザーなど以前よりいろんな治療法を試してきましたが、この組み合わせが一番良いようです。
(もちろん、医科においては注射(だいたいは患部へステロイド剤)が選択肢となりますし、効きは抜群です。が、腱鞘炎への注射はめちゃくちゃ痛いです。また、一時的に炎症を抑えるだけのため、短いスパンで再発する可能性があります)
安静目的にシーネ固定なども検討しますが、必ずしもオーバーユースが原因ではないことや私生活での妨げになること、長期固定は関節拘縮の原因になりうること、などにより運動時痛や炎症の程度によっては、固定せずに通院回数を多めにして施療を行うことを選択することが多いです。
今回の患者さんは、まだバネ症状が出ておらず軽度であることや、私生活や仕事で固定を行うことができないシチュエーションが多い事、通院は大目(週2~3)に行えることなどを考え、固定を行わずに施療を行うことになりました。
その日から週2日で通院を行い、ラジオ波とハイボルト、手技(合計で15分程)を組み合わせた施療を行い、3週目で患者さんから
「痛みがほとんどなくなった!」
との事。少し早いですがエコーにて確認してみました。
腱の肥大部が明らかに小さくなっているのが解ります。
触診においても、初診時蝕知できた硬結部が明らかに小さくなっていました。
患者さんも、朝起きた時の痛みや重い荷物を持った時の痛みが無くなったとの事。
正直、ここまで短期間でよくなったことはかなり珍しい症例ですが、なんにせよ、患者さんの喜んだお顔が拝見できて、施療してきた甲斐がありました。
とは言え、まだ完全に硬結が取れた訳ではなく、また再発の可能性がありますので、しばらくのフォロー通院をお願いしました。
ちなみに、ラジオ波利用でも腱鞘炎は局所的扱いとなる為、一回+1000円の自費負担となり(別途施療代がかかります)、しかもハイボルトは無料となります。1ヵ月週2回で通われる方前提の回数券もご用意しております。
ふくらはぎの肉離れ~いち早い社会復帰をめざす~
今回来院された患者さんは、腓腹筋肉離れです。
一週間ほど前に階段を踏み外した際に右ふくらはぎが痛くなったとの事。
整形外科を受診されエコー、レントゲン検査を行い腓腹筋肉離れの診断を受けていました。
医科では特に固定もなく、リハビリもなく安静指示をされたそうです。
歩行時痛が強く、また安静による筋力低下も心配され、また早めの社会復帰を望まれており、HPで当院の「ラジオ波治療」に興味を持たれ来院。
まずは、当院でもエコーで診させてもらいます。
右腓腹筋肉内側頭に圧痛と硬結があり、エコーで同箇所に大きな血腫を認めました。
受傷後一週間であったため、内出血は止まっているものの、血の塊が液状として残っているようです。
このまま血腫を残してしまうと硬結が強く残ってしまうため、低出力のラジオ波・・・非加熱モード・・・を用いて筋の硬結を解除しながら血腫の除去を行います。
同時に、治癒能力を促すためにマイクロカレントを患部に当て、筋力低下を防ぐ目的でEMSも行います。
テーピング固定は行わず。受傷後一定期間経っていることと、歩行時痛も和らいできていること、また早期復帰を目指すため拘縮予防のためにも固定は避けました。
ラジオ波とマイクロカレント、EMSの治療を毎日~隔日で行うこと2週間。
血腫が消退しました。筋組織の瘢痕化=筋硬結の長期残存は避けられそうです。
筋線維の不整がまだ残っておりますので、引き続き、マイクロカレントによる治癒の促進と、ラジオ波の出力を少し上げて、筋組織の柔軟化を行っていきたいと思います。
患者さんからも、痛みがずいぶん楽になったこと、階段の上り下り早くにができるようになったことで助かったとのお声を頂きました。
実はまだまだ完治ではないので、引き続き通院は行ってください!!とりあえずは良かったですね!
小児骨端線離開~子供の小指の怪我~
今回は小児骨折の代表的な損傷、骨端線離開です。
幼小児の骨には骨端線(成長軟骨ともいう)が存在し、骨端線は骨の成長において重要な役割を担っています。
幼小児の場合、急激な外力が加わると組織学的に抵抗力の低い骨端線部と骨組織部が離開を起こすことが多く、「骨端線離開」となります。
骨折と同意義で治療も同じですが成長に係る重要な場所でもあるので外科的な手術療法よりも保存療法が多く選択されます。
つまり徒手整復と固定です。
今回来院された患者さんは、小学生。
一カ月前にキャッチボール中に誤って小指をボールにぶつけてしまったとの事。
直ぐに整形外科受診、レポ(徒手整復)を行いシーネによる固定を行っていました。
受傷後一カ月経過もXP上、骨の癒合がいまいち進んでいないとの経過報告を受け、心配された親御さんが当院に連絡され来院となりました。
状況から判断するに、おそらく受傷時尺側転移を起こしており、橈側方向への牽引と屈曲のレポを行ったと推測できます。
受傷部位への限局性圧痛が残っており、骨癒合はまだまだの模様。
屈曲時のROM不良が見受けられましたが、小児の場合、固定による関節拘縮は稀の為、このまま様子をみて良いでしょう。
当院にてエコー撮像
小児によくある骨端線離開(骨折と同意義)。小指に外転方向の外力が加わり、基節骨の骨端線が離開。
その際に基節骨が骨折したものと思われる。S-HⅡ型。医科にて整復済み。
基節骨近位部に骨の不整と仮骨、骨端核と骨の間に若干のギャップが認められものの、尺側転移の解剖学的整復は案外難しく、この程度のギャップであれば問題ないと思われる。
エコー撮像後、骨癒合の不良を親御さんも心配され、当院にてLIPUS治療を開始することとなりました。
毎日20分のLIPUS治療を行うこと1か月
骨皮質がよりしっかりとした高エコー像を示している。
損傷部位に旺盛な仮骨生成を見ることができました。
限局性圧痛もなく、テーピングによる柔軟かつ安全な固定と自宅でのROM訓練指導を行ったこともあり、屈曲時のROM不良も解消されています。
医師の方でも経過良好との判断を頂きました。
あと少し頑張れば、大好きなキャッチボールができるようになります!がんばって!
★LIPUSとは??
超音波骨折治療であるLIPUSは、骨癒合を促し、症例によっては40%も早く骨癒合が起こったという、今では骨折治療においてスタンダードとなってきた治療方法です。
治療方法はいたって簡単。LIPUS機器を患部に取り付け、20分の照射を受け、これを毎日行うことだけです。20分の間、ゲームをしたり漫画を読んだり、YouTubeを見ていたりすればよいだけです。音波による刺激は皆無でまた副作用もありません。
そして何より、当院では高校生以下の方には無料で利用できます(保険負担分はご負担いただきます。また医師の同意が必要となります。)
当院使用の伊藤超短波「オステオトロンV」
厚生労働省認可の治療器具です。