症例報告(9/12UP)

2024-04-12 15:50:00

ベーカー嚢腫~急な膝裏の痛みを感じたら~

ベーカー嚢腫(膝裏のふくらみ)|痛みを伴う症例

70代女性の症例。膝裏の違和感と痛みを主訴に来院。
エコー観察で変形性膝関節症とベーカー嚢腫の所見を確認し、保存的アプローチを実施しました。膝窩部(膝裏)の膨らみが気になるとご相談

症例の概要

発症は先週初め。前日に高尾山を1万歩以上歩いており、ふだんから水泳にも通う活動的な方です。
整形外科でレントゲン撮影ののち変形性膝関節症と説明され、湿布で経過観察。手術の提案もありましたが、日常生活では大きな不便を感じないとのことで当院へ。

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膝窩部(膝裏)の膨らみが気になるとご相談

エコー所見と考察

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左:変形性膝関節症の所見/右:膝窩部のベーカー嚢腫像

エコー観察では変形性の所見が比較的強めに確認されました。ただし、近年は変形の程度と痛みの強さが必ずしも相関しないことが示唆されています。
本例も、高尾山を問題なく歩ける機能を維持しており、画像所見だけで外科的介入を即断する段階ではないと判断。
一方、膝裏の痛み・突っ張りに関しては、膝窩部にベーカー嚢腫(滑液包の拡張)を確認。これが症状に寄与している可能性を考えました。

ベーカー嚢腫はレントゲンでは分かりづらく、触診・エコー・MRIなどで状態把握を行います。
良性のことが多い一方で、肥大・破裂・圧迫により動作時痛や可動域制限の原因となる場合があります。

保存的アプローチ(当院の対応方針)

当院では薬剤や注射は行いません。物理的アプローチ+運動アプローチを組み合わせ、痛みの軽減膝機能の維持・向上を目指します。

  1. LIPUS(低出力パルス超音波)
    軟部組織への微細刺激により、膝関節周囲の環境改善を後押し。報告では軟骨代謝や炎症抑制との関連が示唆されています。
  2. ハイボルト
    高電圧刺激で疼痛・炎症の鎮静を図り、膝内の余剰な反応を抑えるサポートを行います。
  3. EMS
    大腿四頭筋などを電気的に賦活し、筋ポンプ作用で関節液の循環をサポート。
  4. 運動アプローチ
    大腿・下腿・骨盤周囲の柔軟性・筋力・アライメントを整え、膝窩部の張力負荷を軽減。日常の動作指導も併用します。

膝窩部に境界明瞭な低エコー領域(嚢腫)を確認

施術計画と評価の目安

まずは膝内の炎症反応を鎮静し、ベーカー嚢腫の縮小(再膨隆抑制)を狙います。
痛みが軽快しても、原因となる関節内環境・筋機能を整える取り組みを継続することが大切です。

  • 1〜4週:鎮静期(ハイボルト中心+EMS、必要に応じてLIPUS/軽運動)
  • 4〜12週:機能回復期(LIPUS継続、可動域・筋力・動作最適化)
  • 再評価:1〜3か月の間でエコー再チェックを行い、嚢腫の縮小や膝機能を確認
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物理アプローチ+運動アプローチで、痛みと機能の双方に対応

まとめ

画像上の変形の強さ=痛みの強さではありません。
今回はベーカー嚢腫が痛みの一因と考え、保存的な組み合わせ施術により段階的な軽快を目指しました。
「手術といわれたが日常は普通に歩ける」「膝裏の張りや痛みが続く」――そのような場合は、一度エコーで状態を確認してみましょう。

 

※本ページは柔道整復師による施術・応急対応の紹介であり、診断や治癒を保証するものではありません。
状態により、医療機関での精密検査・処置が必要な場合があります。