症例報告(5/15UP)

2023-03-19 18:02:00

腱鞘損傷(A2プーリー損傷)〜ボルダラー用語「パキった」〜

腱鞘損傷(A2プーリー損傷)

クライミング中に「パキッ」と音が…腱鞘損傷の一例|指の腱を守る正しい対策とは

概要

30代のクライマー男性がクライミング中に指から「パキッ」という音とともに痛みを感じて来院。いわゆる“パキる”と呼ばれる腱鞘損傷でした。今回はその原因や施術内容、再発予防のポイントについて、クライマー目線で詳しくお伝えします。

 

クライマーに多い「パキる」症状の多くは、指の腱鞘(A2プーリー)損傷が原因です。特にアーケイ(クリンプ)持ちを多用する上級者に多く、正確な判断と早期の対応が回復を左右します

他の類似損傷として

1.前腕屈筋群断裂(特の多いのは環指屈筋時作用する筋肉)

2.虫様筋損傷(手内筋の一つで、主に第2指〜第4指MP関節の屈曲を行います)

3.腱鞘損傷(主に多いのは環指A2プーリー。各指の屈筋腱が屈曲時に浮き上がらないよう抑える役目を担っています。)

等も考えられます。

 

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筋骨格系キネシオロジー原著第3版より転載

 

 

腱鞘断裂のエコー画像での確認

指の腱を支える腱鞘(とくに薬指のA2)は、過負荷により断裂することがあります。
今回の患者さんはクライミング中に「パキッ」と音を感じ、その後強い痛みが出現。エコーで確認すると、腱が骨から浮いており、腱鞘の支えが失われていました。
正常な指と比較することで損傷が明瞭となり、確定的な判断につながりました。

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損傷の瞬間に自覚されやすい「パキっ」という音と痛み

「パキる」は俗称ですが、明確な損傷のサインです。特にアーケイやセミアーケイ(ハーフクリンプ)といった高負荷な保持方法では、指にかかるテンションが極端に増加し、腱鞘損傷のリスクが高まります。
抵抗をかけて指を曲げると強い痛みが出るのが特徴です。

 

 

適切な施術と運動制限が重要

当院では、エコーでの確認後、ハイボルト療法やマイクロカレントで痛みと腫れの軽減を図ります。さらにラジオ波による温熱療法や手技によるケアで治癒促進を促します。
また、損傷度に応じてバディテーピングや副子固定を行い、再発予防と日常動作の負担軽減を図ります。
ただし、基本は安静が最優先で、完全断裂がある場合には手術の判断も必要となることがあります。

 

 

よくある誤解

「痛みがなければ登っていい」と考える方もいますが、腱鞘が切れていても安静時には痛まないことがあります。
登攀時に腱が浮き上がってしまい、さらなる損傷を招くリスクがあります。
とくに「テーピングしてるから大丈夫」と過信するのも危険です。

 

 

再発予防には「持ち方の見直し」も重要

アーケイ(クリンプ)やセミアーケイは保持力が高い反面、指への負担が大きくなります。普段から**オープンハンド(タンデュ)**を意識的に使い、指の浅屈筋群を鍛えておくことが予防につながります。

 

 

冷えや疲労もリスク因子

3月とはいえ、朝晩はまだ冷え込む日も多く、ウォーミングアップ不足や練習のし過ぎによる疲労の蓄積も損傷の引き金となります。
練習量の見直しやコンディショニングの徹底が未然予防につながります。

 

 

最後に

よねくら接骨院では、スポーツ現場で起こりやすいケガの評価と対応を行っています。
クライミング中に指に違和感を覚えた方、急な痛みが出た方は、自己判断せずにぜひ一度ご相談ください。
エコー検査を通じて、適切な判断と早期対応をサポートいたします。