症例報告(11/10UP)
腱鞘損傷(A2プーリー損傷)〜ボルダラー用語「パキった」〜
こんにちは、よねくら接骨院、米倉です。桜が咲いてきましたが、まだまだ朝晩冷えたりしてますね。
先日、パキった患者さんが来院されました。
ぱきる?
クライマー用語みたいなものですね。
患者さんは30代男性、私のクライミング仲間で、クライミングレベルが上級者に分類されるほどのガチなクライマーです(ちなみに私は中級程度)。
パキるとは損傷分類では3つに分類されることが出来ます。
1.前腕屈筋群断裂(特の多いのは環指屈筋時作用する筋肉)
2.虫様筋損傷(手内筋の一つで、主に第2指〜第4指MP関節の屈曲を行います)
3.腱鞘損傷(主に多いのは環指A2プーリー。各指の屈筋腱が屈曲時に浮き上がらないよう抑える役目を担っています。)
今回は、この中でも多いとされる3番目の腱鞘損傷に当たります。独特で負荷のかかりやすいクライミング特有の指の損傷で、中上級者に多い損傷です。
簡単に説明すると、指の腱を抑えている鞘(腱鞘)が断裂を起こしてしまい(主に多いのは薬指のA2)、腱の抑えが利かなくなってしまった状態で、損傷した瞬間、パキっと音を感じることから「パキる」と言われています。
左側:写筋骨格系キネシオロジー原著第3版より転載
エコー画像でみるとよくわかります。上が怪我をした指で下が正常な指ですが、線で示した腱が骨(一番白く映ってるもの)から少し浮いているのが解ります。腱鞘が断裂し抑えが利かなくなっている状態ですね。このままでも何もしなければ痛くありませんが、抵抗を架けながら指を曲げていくと激痛が走ります。
こうなってしまうと普通は登ってはいけません。でも、ガチのクライマーの方は登ってしまいます。なので、せめてテーピングをして登るように、またスラブ課題など指に負担のかからない課題をするよう指示します(足置きも重要な練習です)。
テーピングはバディテーピングが基本ですが、損傷により副子固定してしまうこともあります。
でも本当は安静にするのが一番です。
完全断裂した場合、手術適応も考えれられます。無理して登らないことが一番の治癒方法です(1~2か月が基本)。
ちなみに、当院ではエコー画像で判断後、ハイボルト、マイクロカレントで除痛、腫れを抑え、治癒促進を促します。
また、テーピングや状況によって副子固定を行い、筋拘縮予防や治癒後の再断裂を防ぐため、ラジオ波を利用した温熱療法と手技療法を行います。
さらに、パキる人に多いのが、ホールドの持ち方がアーケイやセミアーケイ(カチ持ち、クリンプ、ハーフクリンプとも)を多様する方に多いと考えられます。特に、セミアーケイは結構多用されている方はいらっしゃるのではないでしょうか?私もそうなんです(汗)。
アーケイのほうが保持力が高く癖になるといわゆる「カチラー」になりがちですが、その分、指の関節に掛かる負担は増大し、パキるだけでなく指節関節痛や誘発したり関節変形を進めてしまいます。普段はタンデュ(オープンハンド)を使い、浅指屈筋群を鍛えておき、ホールドが細かくて持てないここぞというときにカチ持ちをするようにしましょう。アーケイやセミアーケイは次の起こすムーブのの幅が狭くなったり、飛距離が出なかったりするので、そういう点でもタンデュ持ちの練習を!
3月とはいえ、まだまだ肌寒い日がたまにあると思います。今回のこういった怪我は、練習のし過ぎによる疲労の蓄積やウォーミングアップ不足や冷えによるものも原因とも言えます。
けがを未然に防ぐためにも、専門家の下でコンディショニングづくりを行ってください!