症例報告(11/19UP)
指の怪我〜指節関節の靭帯損傷〜
DIP関節側副靭帯損傷
★問診★
20代男性で2日前にスポーツ中に指を痛めたとのこと。受傷機序から大きな外力が一度に加わったというより、繰り返して投げていくうちに痛くなったようです。
★視診・触診★
ぱっと見、右手第一指のDIP関節部に腫脹が認められ、圧痛もありました。熱感はハッキリするようなほどではなく、屈曲や伸展動作でも若干の痛みは誘発されるも特に強い痛みはありませんでした。
★エコー確認★
臨床経験的に骨が折れている可能性は低く思えましたが、念のためエコーで確認。
患者さんも、画像での骨折の有無が特に知りたかったようです。
整形外科に行かれるのも良いですが、エコーを備えている接骨院でも骨折の有無の判断は可能です。
エコーでも骨折の所見はないようです。
DIP関節の橈側の側副靭帯部に肥厚が見られ、靭帯損傷の所見が見られます。
強い内出血等もなく、部分的な靭帯損傷と見て良いでしょう。
★処置★
骨折や靱帯断裂による強い関節動揺性はなかったので、このままテーピング固定でも可能ですが、シーネ固定をした方が治りが早いこともあります。
テーピング固定とシーネ固定療法のメリット、デメリットを説明した上で、患者さんとしてはいち早く治したいとのことでしたのでシーネ固定を選択されました。
当院のシーネ固定は、整形外科基準での固定となります。シーネ素材には水に漬けると固まるスプリント材を利用(整形外科で使われるものと同じものを使用しています)。指節関節固定の場合は、包帯を使わずネットを利用した簡便に取り外しができるものです。指を包帯で巻かれると、朝顔を洗ったり、食器洗い等で大変ですよね。どうしても外す必要があるときは、簡単に外せるようにして、また簡単に取り付けられるように配慮しています。
★期間★
目安ではありますが2~3週間の固定、腫れや拘縮等が無ければそのまま良ければ治癒となります。
★費用★
外傷によるお怪我ですので保険適用になり、今回の患者様は3割のご負担となり、初診料、検査料、固定料、あと今回は腫脹減退、治癒促進のためハイボルテージとマイクロカレントもご利用になられたので、4,600円となりました。次回来院時より650円~500円となります。
保険負担割合や自費利用により費用は上下致します。
★所要時間★
18時に来院(ご予約あり)され、お会計は18時40分でした。接骨院の強みは、問診から検査、処置、お会計まで一連の作業でできてしまうところにあります。
★まずは接骨院で確認★
・骨折しているかどうか不安
・骨折していないとは思うけど少しだけ見てほしい
そんな方では、是非当院へご来院ください。「ひとまず確認だけ」でも大丈夫です!
検査後、骨折が判明した場合は、適切に応急処置を行った後、近位の整形外科をご紹介いたします。
腱鞘損傷(A2プーリー損傷)〜ボルダラー用語「パキった」〜
こんにちは、よねくら接骨院、米倉です。桜が咲いてきましたが、まだまだ朝晩冷えたりしてますね。
先日、パキった患者さんが来院されました。
ぱきる?
クライマー用語みたいなものですね。
患者さんは30代男性、私のクライミング仲間で、クライミングレベルが上級者に分類されるほどのガチなクライマーです(ちなみに私は中級程度)。
パキるとは損傷分類では3つに分類されることが出来ます。
1.前腕屈筋群断裂(特の多いのは環指屈筋時作用する筋肉)
2.虫様筋損傷(手内筋の一つで、主に第2指〜第4指MP関節の屈曲を行います)
3.腱鞘損傷(主に多いのは環指A2プーリー。各指の屈筋腱が屈曲時に浮き上がらないよう抑える役目を担っています。)
今回は、この中でも多いとされる3番目の腱鞘損傷に当たります。独特で負荷のかかりやすいクライミング特有の指の損傷で、中上級者に多い損傷です。
簡単に説明すると、指の腱を抑えている鞘(腱鞘)が断裂を起こしてしまい(主に多いのは薬指のA2)、腱の抑えが利かなくなってしまった状態で、損傷した瞬間、パキっと音を感じることから「パキる」と言われています。
左側:写筋骨格系キネシオロジー原著第3版より転載
エコー画像でみるとよくわかります。上が怪我をした指で下が正常な指ですが、線で示した腱が骨(一番白く映ってるもの)から少し浮いているのが解ります。腱鞘が断裂し抑えが利かなくなっている状態ですね。このままでも何もしなければ痛くありませんが、抵抗を架けながら指を曲げていくと激痛が走ります。
こうなってしまうと普通は登ってはいけません。でも、ガチのクライマーの方は登ってしまいます。なので、せめてテーピングをして登るように、またスラブ課題など指に負担のかからない課題をするよう指示します(足置きも重要な練習です)。
テーピングはバディテーピングが基本ですが、損傷により副子固定してしまうこともあります。
でも本当は安静にするのが一番です。
完全断裂した場合、手術適応も考えれられます。無理して登らないことが一番の治癒方法です(1~2か月が基本)。
ちなみに、当院ではエコー画像で判断後、ハイボルト、マイクロカレントで除痛、腫れを抑え、治癒促進を促します。
また、テーピングや状況によって副子固定を行い、筋拘縮予防や治癒後の再断裂を防ぐため、ラジオ波を利用した温熱療法と手技療法を行います。
さらに、パキる人に多いのが、ホールドの持ち方がアーケイやセミアーケイ(カチ持ち、クリンプ、ハーフクリンプとも)を多様する方に多いと考えられます。特に、セミアーケイは結構多用されている方はいらっしゃるのではないでしょうか?私もそうなんです(汗)。
アーケイのほうが保持力が高く癖になるといわゆる「カチラー」になりがちですが、その分、指の関節に掛かる負担は増大し、パキるだけでなく指節関節痛や誘発したり関節変形を進めてしまいます。普段はタンデュ(オープンハンド)を使い、浅指屈筋群を鍛えておき、ホールドが細かくて持てないここぞというときにカチ持ちをするようにしましょう。アーケイやセミアーケイは次の起こすムーブのの幅が狭くなったり、飛距離が出なかったりするので、そういう点でもタンデュ持ちの練習を!
3月とはいえ、まだまだ肌寒い日がたまにあると思います。今回のこういった怪我は、練習のし過ぎによる疲労の蓄積やウォーミングアップ不足や冷えによるものも原因とも言えます。
けがを未然に防ぐためにも、専門家の下でコンディショニングづくりを行ってください!