症例報告(3/9UP)
手掌部屈筋腱損傷(ボルダリング損傷)
手掌部屈筋腱損傷(ボルダリング損傷)
ボルダリングでは、アンダーホールドやダイナミックなムーブの際に手掌部の屈筋腱へ強い負荷がかかることがあります。本症例では、アンダーホールドを保持中に発生した腱損傷をエコーで診断し、保存療法を実施。指に負担をかけないトレーニングを指導し、早期復帰をサポートしました。
◎患者情報
年齢・性別:40代・男性
受傷状況:ボルダリング中の外傷
◎初診時の主訴
患者様はボルダリングジムでアンダーホールドを左手で保持し、右手で次のホールドを取りに行った際に左手掌部および左前腕部に痛みを感じ、その後、指を曲げると痛む、手掌部の腫れが見られたため当院を受診されました。
市外の遠方から来院され、「ボルダリングを良く知っている先生がいる医療機関」をインターネットで検索し、当院を選ばれました。
◎検査・評価
視診では左手掌部に軽度の腫脹が認められ、環指(薬指)の屈曲時に抵抗を加えた際に強い痛みが確認されました。
エコー検査では深指屈筋腱部に腫脹と内出血を伴う腱損傷が確認されましたが、幸いにも腱断裂は認められなかったため、保存療法を選択しました。
★エコー検査の利点★
エコー検査はリアルタイムで軟部組織の状態を可視化でき、腱や靱帯の損傷を的確に評価できます。X線では確認できない部位も詳しく観察できるため、早期に適切な治療方針を決定するのに有効です。
リアルタイムで腱の動きが見れるのがエコーの特徴
上:健側-深指屈筋腱と浅指屈筋腱が別々に動いているのが確認できる。
下:患側-深指屈筋腱と浅指屈筋腱の間に血腫が存在し、両腱の動きが同時に動いている。このまま放っておけば癒着を起こす可能性もある。
◎治療
以下の治療法を組み合わせ、腱の回復促進と疼痛の緩和を図りました。
- ハイボルト療法:高電圧の電気刺激で神経や筋肉に直接働きかけ、即効性のある痛みの軽減が期待できます。
- LIPUS(低出力超音波治療器):超音波で細胞修復を促し、腱や靱帯の治癒期間を短縮します。
- マイクロカレント療法(マイクロリカバリーパッチ):微弱電流を利用し、細胞レベルで修復を促進。血流改善や代謝を活性化することで、自宅での継続ケアが可能です。
◎クライミングへの指導
治療中は患部への過度な負担を避けつつ、他の部位を鍛えるトレーニングを提案しました。
- 2~3週間は指に負担がかかるルート(アンダー、オーバーハング)は禁止
- 足腰の強化とバランス向上を目的に、スラブ壁でのクライミングや体幹トレーニングを推奨
- 回復の状況を見ながら、段階的に負荷を増やし運動を再開予定
★ボルダリング経験者の院長によるサポート★
当院の院長はボルダリング歴10年以上ですが、最近は子育てがメインになり、すっかり腕が落ちてしまった「元・そこそこ登れるクライマー」です。それでも、クライミング特有の怪我やトレーニング方法についての知識は豊富で、「なかなか休みたくない気持ち」も痛いほど理解しています。
必要があれば「休む勇気」を優しくお伝えしつつ、その間にできるトレーニングや早期復帰の工夫もご提案します。もしボルダリング中の怪我や不調でお困りの際は、ぜひご相談ください。登る人の気持ちを知る院長が、治療とサポートであなたのクライミングライフを応援します!