症例報告(2/3UP)
脛骨近位端部骨折の症例
脛骨近位端部骨折の症例報告
患者基本情報
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年齢:70代女性
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主訴:道路で転倒し、右膝を打撲。跛行があり、杖があれば楽とのこと。
受診時の状況
予約が混雑していたため、受付終了後の夜20時に診察を実施。息子さんの車で送迎されました。
診察と初期対応
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大腿骨頚部骨折の除外
高齢者の転倒時にはまず大腿骨頚部骨折を疑いますが、検査の結果、異常は認められませんでした。 -
膝部の所見
膝下部に疼痛と圧痛が強く、エコー検査では骨の不正像が見られたものの、当日は決定的な所見ではありませんでした。夜遅かったため応急処置を行い、後日の再受診を指示しました。
再診と判断結果
初検時ではなかなか判別が難しい骨折でした。
後日のエコー検査では、脛骨近位端部の骨折を強く示唆する所見が確認されました。そのため、整形外科受診を勧め、患者さんの希望する通院先へ紹介状を作成しました。当院が良く紹介する整形外科ではない医療機関でしたが、患者さんの意向を尊重しました。
LIPUS治療の断念 :低出力超音波治療法(LIPUS)は、骨癒合を促進し治癒期間を短縮する有効な治療法ですが、患者さんが希望する整形外科が接骨院との連携を認めない方針である可能性が高かったため、同意が得られないリスクを考慮し導入を断念しました。この旨を患者さんに丁寧に説明し、整形外科での治療に専念していただく対応をとりました。
治療と指導
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固定方法の選択
シーネ固定が推奨されるケースでしたが、患者さんの活動量や骨転位の軽度さを考慮し、包帯による圧迫固定を選択しました。これにより、自宅での行動制限を最小限にしました。 -
歩行指導
松葉づえを用いた免荷歩行を指導し、患部への負担軽減と安全な移動をサポートしました。
課題と考察 :高齢者の骨折では、治癒期間を短縮し早期に回復することが極めて重要です。今回のケースでは、地域医療における接骨院と医療機関との連携の課題が浮き彫りになりました。当院では、患者さんの希望を最大限尊重しながら、適切な治療とリハビリを提供できる環境を目指しています。
今後も患者さんにとって最善の医療環境を提供し、高齢者の骨折治療における早期回復を支援してまいります。